GSuiteのGmailと他メールサーバーを併用する方法
Googleが提供している「G Suite」は、GmailやGoogleドライブ、Googleドキュメントなどビジネスで利用できる便利なサービスが魅力的です。大容量で強力なスパム対策機能があるGmailを独自ドメインで利用できるという点は、これだけでも利用価値があるのではないでしょうか。
今回は、独自ドメインのGmailと他メールサーバーを併用しつつ、コストダウンする方法を紹介したいと思います。
2019年4月に料金改定を行い、現在は下記の料金形態となっています。
G Suiteプラン | 改定前 (1ユーザ) | 改定後 (1ユーザ) |
Basic | 500円/月 (6,000円/年) | 680円/月 (8,160円/年) |
Business | 1,200円/月 (14,400円/年) | 1,360円/月 (16,320円/年) |
Enterprise | 3,000円/月 (36,000円/年) | 3,000円/月 (36,000円/年) |
小規模事業者などで、数アカウントの利用でしたらそれほど問題は無いのですが、数百アカウント規模になってくるとコストが非常に高くなるため、メールを多用するユーザにはG Suiteを、それほど使わないユーザにはレンタルサーバの標準メール機能を利用してコストダウンを図りたいと思います。
使用する構成
・G Suite Basicアカウント 1つ
・エックスサーバー X10プラン 1台
・さくらのメールボックス 1台
・独自ドメイン(example.com) 1つ
G Suite サーバー | |
エックスサーバ | svXXXX.xserver.jp / 111.111.111.111 |
さくらのメールボックス | example.sakura.ne.jp / 222.222.222.222 |
G Suite by Google Cloud
https://gsuite.google.co.jp/
まず最初にGSuiteの登録を行い、独自ドメインでGmailを利用できる環境を作成します。
独自ドメインの登録方法は他サイト等で紹介している記事が多数あるので、ここでは重要なポイントだけ紹介します。
MXレコードの編集
MX サーバーアドレス | 優先度 |
ASPMX.L.GOOGLE.COM. | 1 |
ALT1.ASPMX.L.GOOGLE.COM. | 5 |
ALT2.ASPMX.L.GOOGLE.COM. | 5 |
ALT3.ASPMX.L.GOOGLE.COM. | 10 |
ALT4.ASPMX.L.GOOGLE.COM. | 10 |
ゾーンファイルに上記のMXレコードを追加します。
この設定により、example.com宛に送信されたメールは全て、GSuiteで受け取る事になります。
次に、Gmailの設定変更をします。
Gmailの設定
GSuite 管理コンソール
[アプリ]→[G Suite]→[Gmail]→[詳細設定] を選択
- ホストの編集
[ホスト]のタブを開き、[ルートを追加]を選択 - [全般設定]→[転送]→[転送]を編集
ポイントは、[影響を受けるアカウントの種類]で、[キャッチオール]が選択されている事。
この設定により、GSuiteに存在しないアカウント宛(メールアドレス)に送られてきたメールは、エックスサーバーに転送されるようになります。
エックスサーバーの設定
G Suiteのキャッチオール機能によって転送されてきたメールをエックスサーバで受信できるようにします。
といっても、エックスサーバ側で特別な設定をする必要は無く、通常のメールアドレスを追加設定します。
エックスサーバのアカウント毎の最大容量は5GB以下なので、それ以上の容量が必要なユーザーはGSuiteで作成してください。
ユーザBからユーザAへの送信問題
ユーザAは送受信共にGmail機能を利用するので、外部アドレス宛や、同ドメイン/別サーバであるユーザB宛のメールもキャッチオール機能によって問題なく送信されます。
一方、ユーザBは外部アドレスに送信する際は、エックスサーバーから直接、相手方のサーバーに送信されるので問題ありません。
しかし、ユーザBからユーザA宛にメールを送信する時に問題が発生します。ユーザBがユーザAにメールを送信した際、エックスサーバのメールアカウントリストにはユーザAのアドレスが無いため、【宛先不明】の送信エラーとなります。
そこで、ユーザBが送信するためには、エックスサーバのサーバーを利用するのではなく、別の送信サーバーを利用することで解決できます。
G Suiteではこの問題の為に、SMTPリレーサービスを提供しています。
ユーザBが送信する際は、Googleの送信サーバを利用して送信が可能となります。
しかし、このSMTPリレーサービスは、ユーザが1日に送信できるメール数に上限があり、無制限に送信できません。エックスサーバーのアカウントが多い場合、この制限に引っかかってしまい、送信トラブルを引き起こす事も考えられます。
24時間あたりに送信できるユーザあたりのメール件数 (ただし、G Suiteアカウントのライセンス数によって異なる) | 最大10,000件 |
24時間あたりに送信できるユーザあたりの実質(重複を除いた)宛先数の最大値 | G Suiteアカウントのライセンス数の約130倍 |
例えば、G Suiteアカウントが1アカウントの場合、SMTPリレーサービスを利用できるのは24時間あたり130通までとなり、エックスサーバーのアカウントが100アカウントあった場合、ユーザ一人あたり1通程度しか送信できなくなります。
したがって、ここではSMTPリレーサービスを利用せずに、別の送信専用メールサーバーを利用することにします。
さくらのメールボックスを送信専用サーバーにする
さくらのメールボックスは、年間1,048円(2020年2月時点)で利用できるコストパフォーマンスのよいメールサービスです。
メール容量は10GBとありますが、送信専用で利用するので特に問題はありません。
SPFレコードの編集
GoogleのSMTPリレーサービスを利用せずに、別の送信専用サーバーを設置した場合、ユーザBがメール送信時、相手先に迷惑メールと判断されてしまう可能性があります。これは相手方のメールサーバーが example.com ドメインのDNSゾーンファイルを参照した時に、さくらのメールボックスで利用しているサーバーと紐付けが無く、なりすまし送信と判断されてしまいます。
そこで、この問題を解消するために、ゾーンファイルにSPFレコード(TXTレコード)を追加します。
example.com IN TXT “v=spf1 +ip4:111.111.111.111 +ip4:222.222.222.222 -all” |
さくらのメールボックスのIPアドレスは利用登録後、【example.sakura.ne.jp】というドメインを割り当てられるので、それを nslookupコマンドにてIPアドレスを調べます。合わせてエックスサーバーのIPアドレスも登録しておきます。
さくらのメールボックスの送信上限
さくらのメールボックスも万能ではありません。公式には公表されていないようですが、下記の送信制限があるようです。
メールあたりの送信サイズ | 200MBまで |
15分あたりの送信上限数 | 100通 |
1日あたりの送信上限数 | 10,000通 |
小規模事業者の場合でしたら問題は無いと思いますが、規模が大きくなると制限に引っかかる恐れがあります。
また、さくらのメールボックスでは送信専用として利用する方法を想定していないと思うので、制限がかかる可能性もあります。
その場合は、VPSなどにPostfixやsendmailを利用した送信専用サーバを構築したほうが良いかもしれません。
メールソフトの設定
G Suiteユーザの場合は、Gmailの設定と同じなので、メーラーを使う場合はそのままGmailの設定を行えば利用できます。
エックスサーバーとさくらのメールボックスを利用した際の、メーラー設定は下記の通りになります。
送信設定(さくらのメールボックスアカウント)は他ユーザと共有して問題ありません。
【受信設定】
受信サーバー | svXXXX.xserver.jp |
ポート番号 | 993 (SSL/TLS) |
ユーザー名 | userB@example.com |
パスワード | 【パスワード】 |
【送信設定】
送信サーバー | example.sakura.ne.jp |
ポート番号 | 587 (STARTTLS) |
ユーザ名 | 【さくらサーバー作成したアドレス】 (例) send@example.sakura.ne.jp |
パスワード | 【さくらサーバーで作成したパスワード】 |
まとめ
GoogleのG Suiteは非常に便利なサービスです。小規模事業者で利用するなら全アカウントをG Suiteにしても良いかもしれませんが、規模が大きくなるにつれて、費用は高くなっていきます。それほどメールを利用しない(5GB以下など)ユーザは、別のメールサーバに切り離して運用することで、大幅にコストを削減できる可能性があります。
免責事項
ここで紹介した方法は今後変更される可能性もございます。これらの設定によって問題等が起きても自己責任の上でご設定ください。
なお、本記事における個別のご質問には対応いたしておりません。
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